研究概要 |
一昨年および昨年の実験結果から中性子ラジオグラフィ-ではイメ-ジの黒化度におよぼす影響が,X線に比べてはるかに大きく,濃度測定のさいに十分考慮する必要のあることがわかった。そこでこれを補正するための実験モデルを考え検討を行った。実験方法は被写体となる,硬組織,軟組織,レジンなどの有機質の歯科材料,各種金属歯科材料のステップを作成し中性子の不透過性物質としてカドミウムワイヤを線源側に固定して中性子照射を行い、中性子不透過部位の黒化度を連続的に測定することによって中性子による散乱線の定量的評価を行った。この結果,特に生体成分となる硬組織ステップと軟組織ステップでは散乱線の影響が比較的大きくステップの厚さが増加するにつれて近似二次関数的増加する傾向が認められた。そしてこの結果から各歯科材料の減弱係数を算出し,理論値との比較を行った。これらの結果をふまえて各材質中の欠損あるいは異物を測定した結果,今までの方法と比べ、より高い精度のもとで欠陥を検出できることがわかった。また中性子ラジオグラフィ-とX線ラジオグラフィ-のサブトラクション法による軟組織と硬組織が混在した被写体中で各々を個別に定量する方法について,従来より行なわれてきたX線によるデュアルエネルギ-サブトラクション法と比較してみた。X線のサブトラクションは管電圧を変えた2ショットサブトラクション法とフィルタ-を用いた1ショットサブトラクション法について実験を行い,中性子線・X線サブトラクション法との分離度および解像度について検討した。これらの比較を行った結果,分離度に関しては中性子・X線サブトラクションが最もすぐれており解像度については,試料の位置的な固定の不必要な1ショット法が最もよかった。しかし位置の固定がイメ-ジの差分に直接影響する因子なので固定法について検討中である。
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