回転パノラマX線撮影法における断層域の3次元的位置関係を正しく把握することは、撮影上、診断上、重要である。そこで、実験的に断層中心を求め、全顎歯列弓域における断層域のMTFをスリット法にて測定し、そこから全顎歯列弓の立体的な断層域を求め、また、計算による断層域との比較検討を行なった。 方法 パノラマX線装置は、モリタ社製Veraviewを、増感紙・フイルム系は、Dupont HiPlus/Kodak X-OMAT RPの組合せを、1次スリット幅は、1.1mmとした。 1.回転シャッタ-を用いて、断続的X線像を作成し、McDavidらの計算式により、断層中心を求めた。 2.正中を基準として、左右側各9箇所、計19箇所について、スリットX線像を作成し、マイクロデンシトメ-タにより濃度測定を行ない、マイクロコンピュ-タにて、線像強度分布からMTFを計算した。さらに断層域を規定するため、10cycles/mmまでのMTF値の2乗積分値の100倍値(ITF値)を求めた。 3.計算による断層域は、記録系のMTF値をDoiらのデ-タにより、WelanderらやMcDavidらの示した計算式より求めた。 結果 1.ITF値75までを断層域と規定すると、実測値では、正中部で約6mm、左右平均して、犬歯相当部で約7mm、大臼歯部で約15mm、顎関節相当部で約21mmであった。 2.実測による断層域と計算による断層域とは、かなり一致していた。
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