本研究の目的は、顎顔面頭蓋に対して矯正力を作用させた際の顎骨、とくに下顎骨における変形様相を力学的に最適形状決定法を用いて解析し、さらに臨床結果(頭部×線規格写真真分析)との比較から従来使用してきた矯正装置(high pull chin capとposteior bite block併用時)の作用機序を生物力学的に検討し、さらにその問題点を見い出し、改良を試みることにある。 力学的解析を二次元境界要素法とした最適形状決定法プログラムを使用するために、大型計算機上で使用しているプログラムをパーソナルコンピュータに移植した。 頭部X線規格写真分析プログラムと画像処理プログラムを改良し、イメージスキャナとデジタイとを用いて下顎骨の節点座標を決定し、コンピュータ内蔵の固定ディスクと5インチフロッピーディスクに保存した。最適形状決定法により、chinc apの索引方向を下顎頭方向、下顎頭より上方10゜、20゜、30゜と、下顎角を115゜、130゜、145゜の計12条件での変化を解析した。途中の下顎骨の形態をディスプレイとX-Yプロッタ上で確認した。その結果、下顎枝が長くなり、下顎角が開大した。一方、臨床での装置の作用機序、治療効果の検討は、頭部X線規格写真のトレースをイメージスキャナとデジタイザを用いて術前と術後の計測点をコンピュータに入力して行った。その結果、成長期の開咬患者にhigh pull chin capとposterior bite blockを併用することにより、下顎枝が長くなり、下顎角が狭小化することが認められた。さらに三次元境界要素法を用いて応力分布を調べた結果、二次元応力分布と近い結果となった。 この結果、high pull chin capとposterior bi te blockを併用することで、平等強さの形状に近づいて下顎枝が長くなるこ とがわかった。Chin capの索引を上方にするほど、また下顎角が小さいほど 効果があることがわかった。
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