研究概要 |
本研究の目的は矯正的歯の移動に伴う歯周組織の力学的および生物学的変化を非侵襲的に把握できる指標を得ることである。そのため、生体の機械インピーダンス測定法を応用して歯周組織の機械インピーダンス測定装置を試作し、実験結果をもとに改良し本解析法を完成した。次いで本装置を歯根膜を中心とした歯周組織の性状を知る手段として臨床応用するため、成人を対象として検討を進めた。 検討は次の項目について行った。1,正常な歯周組織をもつ歯および矯正治療中の歯を対象歯とした歯周組織の粘弾性測定装置の測定の再現性について。2,正常な対象歯の歯周組織の粘弾性特性の日内変動、経日変動について。3,矯正的歯の移動にともなう歯周組織の粘弾性特性の変化と歯の移動様相について。 測定の再現性は、測定値の変動係数が10%以内であり(2.7〜8.2%)、良好であると考えられた。また正常歯の日内変動は測定値の変動係数が12%以下であり(7.2〜12.0%)、再現性の変動係数より大きく、経日変動は測定値の変動係数が最大で17%(8.0〜17.1%)と日内変動よりもさらに大きかった。 矯正的歯の移動の初期4週間における矯正的な歯の移動量と歯周組織の粘弾性特性の変化は、臨床上正常歯であると判断された同名歯であっても、それぞれ歯によって異なることが明らかに認められた。また矯正的な歯の移動中、歯周組織の粘弾性特性の一時的な上昇(ピーク)が歯の移動の停滞期間の開始時期に一致して出現することが認められ、その関連性が強く示唆された。 以上本研究の結果は、矯正的な歯の移動に伴う歯周組織の粘弾性特性の変化を検討することによって、当該歯周組織の正常を推測するための臨床上有効な指標が得られる可能性を示した。
|