歯周病感受性の簡易検査の開発の第1歩として、歯周組織の健康状態が様々な被験者の呼気と歯肉縁下プラーク培養気相中の揮発性硫黄化合物を測定し、同時にガス産生性歯周病原菌の検出率を調べて、両者の関連性を検討した。 30歳以上の者を被験者として、呼気(100ml)をテフロンバックに捕集後、その濃度をガスクロマトグラフで測定した。一方、滅菌ペーパーポイントを用いて採取した歯肉縁下プラークを緩衛生食水に懸濁後、THBブロース中で2日間嫌気培養し、培養管の気相を同様にして測定した。同時に、プラーク希釈液を4種類の嫌気性菌分離用寒天培地に播種し、4〜7日間培養した後、生育したコロニーを「API-嫌気」試薬を用いて同定した。 その結果、1)歯周組織の健康な者の呼気とプラーク培養液には、揮発性硫黄化合物はほとんど検出されなかった。2)歯周ポケットが6mm以上に及ぶ重症患者の呼気と培養気相からは、常にメチルメルカプタンと硫化水素が検出された。3)軽度〜中等度の歯周炎をもつ者の呼気中には硫黄化合物がほとんど検出されない場合もあったが、プラーク培養気相からは、軽度歯周炎患者でもかなりの頻度で検出された。4)揮発性硫黄化合物の検出は、Fusobacteriumあるいは、Bacteroldesの存否に影響されているように思われた。5)呼気中の揮発性硫黄化合物を検出するには午前中(昼食前)に行うのが望ましいと考えられた。以上のように、歯周病関連菌が産生する揮発性硫黄化合物は、呼気法では検出感度が低いが、歯肉縁下プラーク培養法によって高感度で検出できた。これらの方法は、歯周病臨床検査として応用可能であることが示唆される。
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