本研究は、学部教育経験者と学部教育未経験者の視覚的な情報獲得行動を眼球運動解析システムを用いて比較して口腔内状況の特徴抽出行動の差異を明らかにし、効率的な教育方法を検討することを目的とした。 被験者は奥羽大学歯学部在学中の学生のうち、臨床実習を終了した専門過程4年生30名、進学過程1年生30名とした。眼球運動の測定には、注視点解析システムを使用した。 初年度は、同一患者の口腔写真とパノラマ写真を刺激対象として、被験者の眼球運動を測定した後、内省報告、当該症例の模型選択試験を実施した。次年度、最終年度は、上顎前突、反対咬合、開咬、正常骨格の側面頭部X線規格写真を刺激対象として、被験者の眼球運動を測定した後、内省報告および当該症例の顔貌写真選択試験を実施した。 結果 1)従来、口頭あるいは記述による方法によって推定していた直視的情報探索行動の客観的評価に、眼球運動解析システムが有効であった。 2)効率良い情報抽出には探索方略が大きく関与しているものと考えられた。 3)専門知識の履修を終えた被験者では、診断に重要な探索部位を的確に注視していたことから、学習効果が大きく影響することを確認した。 以上の結果から、効率的な教育をするには、専門知識だけの教育でなく、課題解決のための探索方略を教育することが有効であると推察された。
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