矯正治療による歯の移動が、顔面形態とくに口唇部形態にどのように影響を与えたか、またこの形態的変化が及ぼす口腔諸筋の歯に対する影響について、モアレトポグラフィによる三次元解析と圧力センサ-による口唇圧測定により検索することを目的として研究を行った。 本年度の実績は次のとおりである。 1.高感度圧力センサ-による口唇圧測定について 昭和63年度において、圧力センサ-の諸性質および測定装置の完成により、臨床デ-タの収集を行った。 (1)圧力測定法について;安静時の口唇圧力は、装置装着に伴う口腔環境変化に対する順応時間に個人差がみられ、装置装着30分後に測定を行った。あらかじめ顔面動作を規定し、下記の運動を反復練習させた後、測定を行った。 (2)運動時および安静時の唇圧の測定;規定運動は、(1)口唇が軽く触れ、上下歯列は咬合していない状態(安静状態)、(2)咬みしめ(左右臼歯部での強い咬みしめ)、(3)口角牽引(咬合した状態で口角を後方に引く)(4)口唇突出(上下口唇を前方へ突出させる)、(5)開口(5mmのbite blockを第一大臼歯で咬合させる) (3)口唇圧デ-タ処理;口圧値は各被検者間での絶対値比較は不可能と考えられたため、絶対評価のため5つの運動を行い収集した。また測定部を上下中切歯部の他に犬歯部を増設し、口唇とくに口角部の変化に対応させた。 2.モアレトポグラフィにおける形態解析 上記の5つの運動における、被検者のモアレ写真を撮影し、口唇部形態の動的変化に対応した口唇圧変化の比較を行った。これにより、口唇部軟組織の移動量と口唇圧との間に比例的関係が存在すると考えられた。
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