研究概要 |
平成2年末日までに来院した唇顎口蓋裂児は本研究開始から152名に及ぶ。平成2年度における研究結果は次の通りである。 1)口蓋床を確実に装着した唇顎口蓋裂児25名の調査では,生後5〜6カ月までに正常児とほぼ同量の哺乳ができ,授乳時間も15〜20分になった。 2)3歳になった患児の歯列弓測定結果では,正常児と比較して歯の欠除がない群では有意差を認めず,欠除群では歯列前方部に有意の狭窄を認めた。しかし,口蓋床を使用しなかった群との比較では,先天欠除を有する群でも有意に歯列弓幅の増大を認めた。 3)口蓋床を装着していた唇顎口蓋裂3歳児38名についての齲蝕調査では,齲蝕保有者率42.1%,1人平均d歯数1.6歯で,名古屋市および愛知県3歳児健診の結果と比較して良好な状態を示した。また,過去の唇顎口蓋裂児の齲蝕に関する報告に比較して有意に良好な結果であった。 4)口蓋床装着による口腔機能獲得の指針を得るとともに,唇顎口蓋裂児に対する口腔保健指導の要項を検索することができた。 5)構音機能の獲得状態は,「吹く」,「吸う」機能は2歳時にほぼ全員が獲得していた。特に口蓋床により全く正常児と同様の哺乳が可能であった患児は,口蓋裂の手術前に吹く,吸う機能を獲得し,口蓋音の発声もみられなかった。また,2歳時より早期に集団生活を行った患児は発語も多く,構音も正常であった。一方,3歳児で集団生活に入っていない患児は言語機能が遅滞していた。 6)口蓋床を使用した3歳児では,顎顔面形態が良好でdolyco型顔貎を呈するものは皆無であり、口蓋床未装着群に比較して良好な上下顎関係を示した。なお,上下口唇形態の不調和については構音機能の精査とともに現在検討中である。 7)新生児期気管内挿管時において口蓋床の利用が操作を簡易にした。
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