研究概要 |
ヒスチジノマイシン(HM)の生産菌株Streptomyces thermotoleranceを培養し、その培養濾液からブドウ晩腐病菌Glomerella cingulataに対する阻害活性を指標にして、HMの抽出とそれに続く精製について検討を加えた。その結果、培養濾液中のHMは、新しい多孔性合成吸着剤Sepabeads SP-207に吸着され、100%メタノ-ルで溶出できることが判明した。ここに得られたメタノ-ルエキスは、シアノプロピルシリカの逆相中圧カラムクロマトグラフィ-にかけ、最初は水で色素成分を溶出しついでメタノ-ルを流すことにより、下図に示したようなHPLCパタ-ンを与えるHM遊離体が得られた。このHMはさらに逆相HPLC(イナ-トシル ODS-2,phosphate buffer(pH7.3)-メタノ-ル 9:1)によってほぼ純粋なHMまで精製できることが判明した。この方法は従来法(活性炭吸着-アセトン塩酸溶出、塩酸塩として抽出精製)^<1)>に比べて精製工程が圧倒的に短かく、しかも遊離体のHMが得られるので、誘導体または塩の調製に有利である。現在、誘導体としてN-アセテ-トおよびDNP体、また塩としてHBr塩を検討中である。誘導体調製に成功すれば(もともと低いHMの溶解度が上昇し)これらの1H-および13C-NMRの測定が可能になるので、これにより分子全体の情報を非破壊的に得て、完全加水分解、部分加水分解等の化学的知見と併せて、HMの全構造を決定できる。またHBr塩が良好結晶を与えたならばX線結晶解析を行ってHMの構造確定と絶対配置の決定を行いたい。 1)石丸ら J.Antibiotics,36,1644,1983.
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