研究概要 |
[1]ヒスチジノマイシン(HM)の精製法の改良.HMの生産菌株Streptomyces thermotoleranceを培養し,その培養濾液からブドウ晩腐病菌Glomerella cingulataに対する阻害活性を指標にして,HMの抽出とそれに続く精製について検討を加えた。その結果,培養濾液中のHMは,従来法(活性炭吸着-アセトン塩酸溶出)^<1)>により塩酸塩として抽出した後,次のような新しい方法で,簡便かつ効率よく精製できることが判明した。(1)強酸性陽イオン交換樹脂Dowex50x4(H+)吸着-NH_4C1溶出(2)多孔性吸着剤Sepabeads SP-207吸着-MeOH溶出(3)逆相分取HPLC(Inertsil ODS,リン酸バッファー(pH7.3)-MeOH9:1)(4)SEP-PAK C-18吸着-MeOH溶出(脱塩). [2]HMの化学的および物理化学的性状と構造解析.(1)HM塩酸塩のFAB-MSよりHMの分子量は,643と決定された。(2)HMは定性反応より分子内に硫黄原子を持つことが推定された。(3)HMの13CNMRより,HMは炭素24個からなり,メチル基は存在しない。(4)硫酸塩の高分解能FAB-MSの測定値[MH]^+は,644.2090であり,このデータおよび元素分析の結果より分子式はC_<24>H_<37>N_9O_6S_3(Calcd.644.2047)と推定される。(5)NMRからは4種のアミノ酸の存在が示唆されるが,HMは完全加水分解により3種のアミノ酸を与え,その1つはヒスチジンと同定された。3種の非タンパク系アミノ酸の構造決定がHMの構造解析のキーポイントになると思われる。(6)HM塩酸塩は水-エタノールから再結晶されて微細針状晶を与えることが判明した。 1)石丸,石田,上尾,中村 J.Antibiotics,36,1644,1983。
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