研究概要 |
1.発癌性を有するキノリンをモデル化合物として、種々の置換基を導入した場合の遺伝毒性への効果を検討した。3位にF,Cl,Br基を導入すると変異原性は全く消失した。2位にCl基を導入しても変異原性は消失したが他の立置にハロゲンを導入しても活性は失われず、なかには親化合物であるキノリンより強い活性を示したものもあった。一方、メチル基を導入した場合には、2位、3位を含めて、全ての位置異性体に強い変異原性が認められた。細胞に対する致死効果について見ると、全てのCl置換体およびBr置換体には極めて強い毒性が認められたが、一方F置換体、特に3ーF置換体には親化合物であるキノリンと同程度の毒性しか認められなかった。そこで3ーFキノリンとキノリンの肝ミクロソーム酵素による代謝速度を比較検討したところ、両者は同様の速度で解毒的代謝を受けることが判明した。これらの効果を総合すると、3ーF置換体は、キノリンと同様に解毒されるが、遺伝毒性代謝産物への代謝経路は完全に抑えられ、しかも他のハロゲン置換体に見られる様な、ハロゲンによる細胞毒性効果は全く認められない。この様に、モデル化合物として用いたキノリンの遺伝毒性を、3ーF置換することにより完全に除去することが出来た。他の有用な芳香族アミン類の遺伝毒性除去にF置換が有効である可能性を示唆するものである。 2.アミノ基を置換基として有する芳香族アミン類には有用なものが多い反面、それらの多くのものには強い遺伝毒性のあることが知られている。そこで、アミノキノリン、6ーFーアミノキノリン類をモデル化合物として、芳香族の種々の位置にF原子を導入することにより変異性原性が消失するか否かを検討する目的で3ーFーアミノキノリン、3ーFーアセチルアミノキノリンなどを合成し、その遺伝毒性について検討を行っている。次年度においてその全ぼうを解明したい。
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