研究概要 |
1.クワドリシクラン(Q)のノルボルナジエン(N)への変換反応におけるレドックス触媒として各種金属酸化物を選び検討したが、光エネルギーの変換系にはこのままでは使えないことを知った。そこでQの酸化還元電位(電位)を低下させることを目的として電子供与基(Me-、Ph-、MeocH_2-,HocH_2-など)を導入したQ誘導体を合成した。これらのQの電位は予想通り低下した。しかもQ→N反応は種々の金属酸化物によって強力に触媒作用を受けた。しかしながら、QーCH_2^+の安定性のためと思われるが、Qのなかには比較的不安定なものもある。この中でMeocH_2-が2個、Ph-が2個対称的にQ骨格に置換した化合物(A)は電位も低く(+0.04Vvs.SCE)しかも安定であった。 2.化合物AについてNへの変換における各種金属酸化物の触媒作用を測定した。なかでも、ReO_3(Km=8.6×10^<-1>)、V_2O_5(Km=2.6×10^<-1>)、PbO_2(Km=1.7×10^<-2>)は強力な作用を示した。一方、MoO_3などN誘導体以外に数種の副生成物を生じる酸化物もあった。 3.従来研究対象としてきたカルボニル基を有するQのNへの変換においても金属酸化物は強力な触媒作用を示すことをKmの比較によって明らかにした。結局、金属陽イオンの電気陰性度と触媒活性との間の相関が認められた。この場合のQ誘導体の電位は特に低い値を示さなかった。従って酸化物はレドックス触媒としてではなく単純な酸触媒として作用したものと考えられる。
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