研究概要 |
富山湾に棲息するホタルイカおよび発光ゴカイに対して、以下に示す化学的検討を加えた。 1.ホタルイカ(Watasenia scintillans)の発光様式について;ホタルイカ発光器から単離したWatasenia luciferin(WL)は、DMSO中では強く化学発光し、一方、発光器のMgCl_2溶液のホモジネ-ト中ではATP依存型のluciferinーluciferase(LーL)反応を示した。この反応における基質をゲンジボタルの場合と同様なluciferyl adenylate型化合物と考え、WLをluciferyl adenylateに誘導し、LーL反応に付したところ不活性であった。そこで今回はその発光条件を種々検討する一方、発光器におけるWLの存在状態を調べるため発光物質の単離を試みた。しかし、発光器中の結合型luciferinは不安定でH_2Oまたは70%MeOHにより室温で容易にWLに分解されるため、現時点ではその目的を対することはできなかった。 2.発光ゴカイ(Odontosyllis undecimdonta)について;これまでに単離したOdontosyllis luciferinは、 ^1HーNMRにおいてδ7.68ppmに1本のシングレット,一方oxyluciferinではδ7.85と9.12ppmにそれぞれ2本のシングレットが観測されるのみであったため、比較的安定なoxyluciferinをbenzyl化し、得られた橙黄色プリズム晶をX線結晶解析に供した。一方、ゴカイのMeOH抽出物からは、11種のlumazine誘導体を単離することができた。このうちの3種は、C_6位にcyclic enolーphosphate側鎖を持ち、NHClにより容易に6ーβーhydroxypropionyllumazine誘導体に加水分解された。一方、このphosphateは、ゴカイの水浸液中、室温で放置することによって、6ーpropionyllumazine誘導体に変換された。また、新しく発見した新種のゴカイ中から、これまでのゴカイには存在しない6ーpropionyllumazineの二量体を単離することができた。
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