研究概要 |
富山湾に棲息するホタルイカおよび発光ゴカイに対して、以下に示す化学的な検討を加えた。 1.ホタルイカ(<Watasenia>___ー <scintillans>___ー)の発光様式について;ホタルイカは死後その発光を再現できないと言われてきた。われわれは、これまでにイカの発光器から Watasenia luciferin(WL)を単離し化学的条件下(DMSO)でその発光を再現させた。今回の実験では生物発光条件下での発光を検討した。その結果、発光器のMgCl_2溶液のホモジネ-トにATPを加えると死後の発光を再現させることができ、さらに発光が終息した液にWLを加えると再び強く発光した。そこで、このATP依存型のLーL反応の機構を明らかにするためにWLをluciferyl adenylateに誘導し、現在このものがLーL反応の基質であるか否かについて検討を加えつつある。 2.発光ゴカイ(<Odontosyllis>___ー <undecimdonta>___ー)について;発光ゴカイは年間を通じて9月下旬から10月上旬にかけて日没1時間後約30分に限って繁殖のため海面に浮上してくる。この間雌は発光液を放出しながら雄を誘引する。われわれは、この興味深い生物リズムに関連するluciferinおよびoxyluciferinを純粋に単離し、oxyluciferinはbenzyl誘導体として結晶化させ、現在それぞれの構造を検討中である。一方、ゴカイのMeOH抽出物から11種類の6ーpropionyllumazine類を単離した。それらのうちの3種は6ーβーhydroxypropionyl側鎖のcyclic enolーphosphate構造を持つ誘導体であることがわかった。興味あることに、これらをゴカイの水浸液中室温で放置すると,それぞれ脱リン酸を伴って6ーpropionyllumazine誘導体に変換されることがわかった。また、今回新しく発見した新種のゴカイから、これまでのゴカイには存在しない6ーpropionyllumazineの2量体を単離することができた。
|