ベンゾジアゼピン系薬物(BZP)は中枢系に存在するベンゾジアゼピンレセプタ-に特異的に結合し種々の薬物作用を惹起することがin vivoやin vitroの実験手法を用いて明らかにされている。in vivoにおける薬物作用は主に行動薬理学的な手法を用いて検討されている。近年、BZPのレセプタ-結合占有率と行動変化の関係が定量的に評価されている。中枢神経は無数のサブユニットからなり、脳局所間における機能(血流量、グルコ-ス代謝、レセプタ-密度など)のheterogeneityが知られている。本研究はBZPのレセプタ-への結合占有率と局所脳グルコ-ス代謝の変化の関係を定量的に検討することを目的としている。1977年、Sokoloffらによって開発された2-deoxyglucose(2DG)法は、薬物による局所脳内グルコ-ス利用率(G)の変化の定量的測定のために有効であると考えられる。しかし、従来の2DG法はトレ-サ-リガンド(14C-2DG)投与後約45分間要する。従って短時間での薬物作用を検討するには不向きである。Gjeddeらは2DGとグルコ-スの脳内動態に関しての同位体効果(Lumped定数;LC)の部位間の違いを検討する目的のため非代謝性グルコ-スアナログである3-0-methyl-glucose(3MG)を用いた。我々はこの方法をマウスに応用し、Gの測定を理論的にも、実験的にも5-10分間に短縮できることを明らかにした。そして、BZPのモデル薬物としてClonazepam(CNZ)とZolpidemを用い、レセプタ-の占有率とGの変化との関係について検討を加え、両パラメ-タの間には1:1の関係はみられず、20〜30%の少ないレセプタ-占有率で、Gに対する最大の効果が得られていることが示された。
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