研究概要 |
今年度の研究実施計画に従って得た知見、成果は以下の通りである。 1)生体チオール類の高速液体クロマトグラフィ、(HPLC)・化学発光検出法の開発:過シュウ酸エステル化学発光系、即ち、ビス(2、4、6-トリクロロフェニン)オキザレート(TCPO)-過酸化水素-チオール類のジメチルアミノベンゾフラニルフェニルマレイミド(DBPM)誘導体による発光系を検討し、5種類の生体チオールを同時定量する方法を開発した。本法は高感度であり、フェムトモルレベルの検出が可能である。本法はDBPMを用いたチオール類の蛍光検出法を発展させたものであり、過シュウ酸エステル化学発光検出による生体チオール類の最初の定量例である。 2)過酸化脂質のHPLC・化学発光検出法の開発:過酸化脂質(マロンジアルデヒド,MDA)と種々の2-チオバルビツール酸類との縮合物について過シュウ酸エステル化学発光を検討した結果、1、3-ジエチル-2-チオバルビツール酸(DETBA)とMDAとの縮合物が最も強い発光を与えることを見出した。縮合物のHPLC-発光検出における検出限界は10フェムトモル(S/N≧2)と非常に高感度であった。現在、DETBAとMDAとの反応性を詳細に検討中であるが、高感度な過酸化脂質の開発が期待できる。 3)化学発光基質としてのピリミドピリミジン類及びアリールオキザレートの合成:過シュウ酸エステル化学発光系での発光収率の向上を目指し生体中の過酸化物あるいはチオール類の定量へ応用する目的で蛍光量子収率の大きいことが期待できるピリミドピリミジン類、並びにHPLC溶媒に対し溶解性や安定性が優れたオキザレートの開発を検討した。ピリミドピリミジン類の中ではジピリダモール、テトラモルホリノ体、テトラチオモルホリノ体などが、蛍光性の強いペリレンなどと比べ、更に優れた発光効率を示すこと、またアリール基にポリエーテル鎖を有するオキザレートがTCPOに比べ極端に溶解性が増大することなどを見出した。
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