研究概要 |
本年度の研究実施計画に従って得た知見、成果は以下の通りである。 1.前年度に開発したジメチルアミノベンゾフラニルフェニルマレイミド(DBPM)を用いる生体チオ-ルのHPLC・過シュウ酸エステル化学発光検出法を生体組織に適用し、ラット肝中のシステイン及び還元型グルタチオンを定量した。しかし、本法は同じくDBPMを用いるHPLC・蛍光検出法に比べて、チオ-ルの種類によっては高感度でない場合も見られた。例えば、ペニシラミンの検出下限は化学発光検出では105fmol、蛍光検出では50fmolであった。そこで蛍光ラベル化剤として4-フルオロ-7-ニトロベンゾ-2,1,3-オキサジアゾ-ル(NBD-F)を用いたチオ-ル類のHPLC・化学発光検出法を検討した。その結果、システイン及びグルタチオンの40および50pmolが検出可能な方法が開発できたが、この場合もNBD-Fを用いる蛍光検出法が8倍も高感度であった。蛍光法に比べ化学発光法が必ずしも高感度となり得なかった原因として過シュウ酸エステル化学発光反応における蛍光物質(蛍光ラベル化体)の適性が考えられたため、この点を解明することが高感度化につながると思われる。 2.1での研究の結果、過シュウ酸エステル化学発光系におけるアリ-ルシュウ酸エステル及び蛍光物質の適性が高感度分析に重要であることが示された。そこで前年度に引き続きアリ-ルシュウ酸エステル及び蛍光物質の簡便な評価法の開発を検討した。簡便性と迅速性を主とするフロ-インジェクション法を開発し、それを用いて発光効率のよいアリ-ルシュウ酸エステルや蛍光物質を見いだした(Analyst,114,1413,1989;Biomed.Chromatogr.,1990,in press)。 3.本年度計画の一つであった発ガン性物質の投与によるラット組織中の過酸化脂質及びチオ-ル含量の変動の測定については予備的検討段階であり、今後更に検討する予定である。
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