研究概要 |
1.一連のモルヒネ2量体の化学合成 エンケファリンの立体コンフォメ-ションとμ/δーオピオイドレセプタ-に対する鎮痛活性との相関性を基に、μーレセプタ-に選択的に結合するモルヒネ分子のδーレセプタ-結合性へと構造化学的に変換する試みとして、モルヒネ窒素原子間をー(CH2)n-(n=0〜6)のリンカ-を介して結合させた一連のモルヒネ2量体を化学合成し、HPLCを用いて精製した後これら化合物の物性デ-タ-をNMR等を用いて分光化学的に明らかにした。 2.一連のモルヒネ2量体の薬理活性測定 合成して得られた一連のモルヒネ2量体の鎮痛活性およびμ/δーオピオイドレセプタ-結合能を(1)マウス輸精管を用いた筋収縮抑制実験および(2)ラット脳を用いたbinding assay実験により調べた。その結果、n=2のエチレン基を介したモルヒネ2量体は、単独のモルヒネ分子に比べ15倍以上のδーレセプタ-結合能を有することを明らかにした。一方、n=3のプロピレン基を介したモルヒネ2量体は逆にμ/δーオピオイドレセプタ-に対してアンタゴニスト活性を有することを明らかにした。n=4以上の一連のモルヒネ2量体については特筆すべき薬理活性は観測出来なかった。n=0,1のモルヒネ2量体については現在研究を進めている。以上述べた結果より、μ/δーレセプタ-への結合には基質分子の大きさと立体コンフォメ-ションが重要に関与していることが明確になった。 3.モルヒネ2量体の安定な立体コンフォメ-ションとδーレセプタ-結合性との相関 モルヒネ分子とは異なる薬理活性を示したn=2および3のモルヒネ2量体の安定な立体コンフォメ-ションを量子化学なMNDO法によるエネルギ-計算により調べ、n=2のモルヒネ2量体は分子自身に2回対称を持つ伸長型平面構造が、n=3は2回対称を持たない折れ曲り構造がそれぞれ安定コンフォメ-ションあることを明らかにした。この結果と前述の薬理活性より、δーレセプタ-への結合能と、適度な大きさでかつ分子自身に2回対称を有する平面構造との間に相関が見られた。このことは、δーレセプタ-選択的モルヒネ様物質の分子設計に重要な情報を提供している。
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