研究課題/領域番号 |
63571035
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
工藤 一郎 東京大学, 薬学部, 助教授 (30134612)
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研究分担者 |
梅田 真郷 東京大学, 薬学部, 助手 (10185069)
井上 圭三 東京大学, 薬学部, 教授 (30072937)
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キーワード | 血小板活性化因子 / PAF / 骨髄細胞 / 分化 / TNF / DNA合成 |
研究概要 |
血小板活性化因子(PAF)が、機能的に未成熟な骨髄細胞に働き、分化と増殖を促進することを見出し、解析を続けている。 (1)モルモット骨髄細胞を用いた解析:モルモット骨髄細胞をPAF存在下に培養すると、培地中に腫瘍え死因子(TNF)様活性が放出されることがわかった。この活性は、抗マウスTNF血清で中和できることから、モルモットTNFであると考えられた。しかしながら、リコンビナントTNFはDNA合成を促進せず、抗TNF血清がPAFによるDNA合成促進活性を一部のみ阻害した。このことより、PAF刺激骨髄細胞の培地中に以前から観察しているDNA合成を促進するタンパク性の因子は、TNFとは異なったものと考えられた。PAFによる骨髄細胞のTNF産生は、骨髄細胞をあらかじめタンパク合成やRNA合成阻害剤で処理すると、全く観察されなかったことから、PAF刺激によって、TNF遺伝子発現が誘導されたものと結論した。これは、PAFが遺伝子発現に直接関与したことを示した最初の例である。一方、調製した直後の未処理骨髄細胞中には、有意な量のPAFが検出された。試験官内ばかりか、生体内でPAFが骨髄細胞の成熟過程で重要な役割を果たしていることを示唆できたといえる。 (2)ヒト骨髄系白血病細胞株を用いた解析:モルモット骨髄細胞で明らかにしたPAFの効果が、ヒト細胞でも観察されるか否かについて、白血病細胞株を用いて調べた。その結果、調べた3種の細胞株いずれもPAF存在下に培養した培養液中に、モルモット骨髄細胞のDNA合成を促進する活性が検出され、ヒト細胞でも同様な効果があることがわかった。活性の強さには強弱があり、K562(赤芽球系)細胞、HEL(赤芽球系)細胞、U937(単球系)細胞の順であった。なお、いずれの培養液中にもTNF活性は検出されなかった。
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