研究概要 |
牛胸腺リンパ球で見出したイノシト-ルリン脂質特異的ホスホリパ-ゼC(PLC)と物理的機能的に結びついたGTP結合蛋白(G蛋白)の精製、性質の検索、細胞レベルでの受容体およびPLCとの関係の解析(生理学的役割の解析)を行った。まず、本G蛋白はGTP結合活性に加えGTP-ase活性を示し、その性質がよく知られている三量体G蛋白と異なり、低分子量(ゲル濾過法で約25,000の分子量)であることを明らかにした。このG蛋白は、量的に細胞質より細胞膜に多く存在することを発見し、細胞膜画分よりこのG蛋白を精製することに成功した。精製G蛋白(G21K)の分子量はゲル濾過法で25,000、SDS電気泳動で21,000と計算された。部分アミノ酸配列を決定し、既知の低分子量G蛋白のアミノ酸配列と比較したところ、rho遺伝子産物と相同性の高いことが判明したが、一部のアミノ酸配列はrho蛋白のアミノ酸配列とは異なっており、新種の低分子量G蛋白であると考えられた。一方受容体とC蛋白およびPLCの関係を細胞(胸腺リンパ球)レベルで調べ、受容体を介したPLC活性制御の機作を明らかにした。すなわちマイト-ゲン受容体は少なくとも2種類のG蛋白(Giと低分子量G蛋白)と相互作用できる状態にあり、受容体へのマイト-ゲンの結合は、活性型となった一部の低分子量G蛋白の細胞膜から細胞質への移行を誘導する。細胞質へ移動したG蛋白は細胞質PLCおよび細胞膜の内側に存在する膜結合性PLCを活性化する。一方、受容体とGiの相互作用により細胞内でのcAMP濃度上昇が抑制され、cAMPによるPLC活性の抑制が生ずることを防ぐ機構として働く。受容体刺激に伴い膜から細胞質へ移行するG蛋白が、G21Kと同一のG蛋白であるかどうかは検討中であるが、G21Kも細胞質へ移行すると考えられるG蛋白もボツリヌス毒素によりADP-リボシル化を受けることから、その可能性は高いと思われた。
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