昨年度、発癌プロモ-タ-TPAにより誘導される遺伝子を8クロ-ン(OTS-1〜8)、マウス骨素細胞MC3T3から分離した。今年度はこのうちの一つ(OTS-8)の発現制御と機能に関する研究を行なった。 第一にOTS-8遺伝子のcDNAの全構造を決定した結果、280個のアミノ酸からなるコ-ド領域が見られ、in vitroの翻訳系で26kDaの蛋白質が合成されることが明らかとなった。塩基配列、アミノ酸配列のいずれにおいてもOTS-8は既知の遺伝子との相同性は認められず、新規の遺伝子と考えられる。 第二に、OTS-8の発現に関しては、Cーキナ-ゼ阻害剤、蛋白合成阻害剤により抑制され、TPAによる誘導はCーキナ-ゼの活性化と蛋白合成を必要とすることが示唆された。また、刺激後4時間をピ-クとする一過性の発現を示し、G_1中期で何らかの機能を持つことが考えられる。マウス各臓器では肺でのみ強い発現が見られた。OTS-8の機能を直接的に推定するため、mRNAを正または逆方向で発現するベクタ-を構築しN1H/3T3細胞に導入した。ネオマイシン耐性遺伝子と同時に、これらの発現ベクタ-を導入すると、逆方向の発現ベクタ-によりネオマイシン耐性コロニ-の出現がかなり抑制され、OTS-8遺伝子機能は細胞増殖に必須であると考えられる。 第三に、TPAにより初期に発現されるc-fos/c-jun遺伝子産物とOTS-8遺伝子発現との相関を見るため、メタロチオネイン転写プロモ-タ-に結合したc-fos遺伝子をN1H/3T3細胞に導入した。Cd^<++>でc-fosを誘導しても、また逆向のc-fosを発現してもOTS-8誘導は影響をうけなかった。
|