研究実施計画に従い以下の研究成果を得た。 1.腎髄質PGE受容体とGTP結合蛋白質との会合体の性質の検討とその精製:前年度の研究において、ラット腎髄質のPGE受容体の結合反応が、GTPの添加により促進されること、およびPGE受容体が百日咳毒素感受性のGTP結合蛋白質と会合していることを発見した。今年度は、GTPで処理をしたPGE受容体とGTP結合蛋白質の会合体が未処理の会合体と比較して如何なる点で異なっているかについて検討した。PGE受容体は、GTPで処理されても対照と同様にGTP結合蛋白質との会合体として存在することがわかった。この性質は、従来知られているように、ホルモンの受容体とG蛋白との相互作用がGTPの添加により阻害されるという現象と全く異なるものであり、この特殊な性質がGTPによる受容体結合の増強と何らかの関連があると考えられる。また、GTP処理群は対照群に比べ、会合体自体の量が増加していることが確められた。以上の結果より、GTP処理によりPGE受容体がGTP結合蛋白質と安定な会合体を形成し、受容体結合が増大することが判明した。更に、この安定な会合体をWGAアガロ-ス、DEAEトヨパ-ルを用いて精製し、GTPrS結合活性およびADP-リボシル化の基質活性を有するPGE受容体標品を得た。これをSDS非存在下でアクリルアミドゲル電気泳動にかけたところ、分子量約400KDの会合体が得られた。この会合体をゲルから抽出し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った結果、分子量140KD、80KDおよび50KDの蛋白のバンドが認められた。現在、各々の蛋白の同定を行っている。 2.単一細胞系を用いたcyclic AMP産生反応の解析:腎髄質由来のMDCに細胞の培養系を確立し、cyclic AMP産生の制御機構を検討したところ、TPAがPGEのcyclic AMP生成促進作用を阻害することを見い出し、Cキナ-ゼを介した受容体あるいはG蛋白のリン酸化による制御が示唆された。
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