ラット腹腔より単離した肥満細胞を、カバースリップ上で4時間培養した後、加速電圧1000KVの超高圧電顕で観察する際には、そのままglu-taraldehydeおよびosminm tetroxideによる固定、脱水、臨界点乾燥を行い、75KVで観察する際には、DTBPで固定後TritonX-100処理を行ない、その後固定、脱水、臨界点乾燥を行なった。正常細胞では、いずれで観察した場合にも分泌顆粒の周囲およびそれらを連絡する複雑なネットワーク構造が観察され、このネットワーク構造が、Triton処理によるartifactではないことが確認された。Compound(48)/(80)刺激により、細胞中心部のfilamentは疎になり、膜近辺で密になった。また、細胞全体的にはfilament構造は減少しており、このことは、SDS-PAGEにより確認された。つまり、肥満細胞内のaction含量は、(48)/(80)刺激によりG-actinが増加し、細胞質分画で減少した。細胞膜近傍の脱出途中の顆粒周辺では、filamentが顆粒を押し出すように集合しており、顆粒が脱出した穴の周辺では、それを取り囲むようにfilamentが存在していた。また、すでに脱出した顆粒は、直ちに細胞から離脱するのではなく、filamentで細胞と連結しており、そのあとfilamentが切断されて細胞から離れていくことが確認された。その際顆粒の表面にactin filamentの断片が存在していることは、G-actin共存下に(48)/(80)を作用させると、細胞表面にF-actinの複雑なネットワークが形成させることで確認された。また、従来homogeneousな構造物と考えられていた顆粒内部が多くの小顆粒で構成されていることが、本研究により明らかになった。その上、太いfilamentが顆粒膜を貫通して分枝し、これらの小顆粒と連結されている像も観察された。これらのことは、脱顆粒を要しないヒスタミン遊離の際に、これらの太いfilamentの関与が強く示唆された。
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