ラット腹腔より単離した肥満細胞をformval膜をはった銅メッシュ上に載せ、RPM1 1640 medium中で37℃、4時間培養した後に、compound 48/80あるいはhistoneを作用させ、反応を停止させた後に、0.1%ruthenium redを含有する2%glutaraldehydeおよび1%osmium tetroxideで固定した。酢酸ウラニウムで染色した後に、脱水、臨界点乾燥を行い試料とした。試料は、超高圧透過型電子顕微鏡(1000kV)を用いて試料ホルダ-を±8°傾斜させて観察した。正常細胞の偏平になった細胞周辺部の細胞質部分には、細胞骨格の複雑なnetworkが観察された。48/80あるいはhistone刺激により、既に細胞外に脱出した顆粒が細胞と細いfilamentにより連結されている像が明瞭に観察された。このようなfilamentによる連絡は、Triton処理を行ったwhole-mount preparationにおいてすでに観察しており、これらの結果より、以前の観察がTriton処理によるartifactでないことが証明された。また、薄切切片や走査電顕像で観察されていたmass degranulationが超高圧電顕でも観察された。また、脱顆粒が誘発された際に、細胞外には内容物のみが放出されると今までは薄切切片の観察から考えられていたが、脱顆粒誘発後の肥満細胞をruthenium red染色を行い超高圧電顕で観察すると、細胞外に脱出した顆粒の周囲に限界膜の存在すること、および顆粒は細胞内に存在していたときと比較して著明に腫大し、限界膜と顆粒内マトリックスとの間に間隙が存在する像が観察された。更に、この電顕像を画像解析することによりこの実態は一段と明瞭になった。また、±8°試料ホルダ-を傾斜させることにより、この膜はまだ顆粒内容物を包み込む袋状の状態を保っていることも明らかになった。
|