老化による血管機能低下の機構解明

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63571045
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 守時 英喜 徳島大学, 薬学部, 教授 (10035545)
• 研究分担者: 堀尾 修平 徳島大学, 薬学部, 助手 (80145010) ; 福沢 健治 徳島大学, 薬学部, 助教授 (90035551)
• キーワード: 加齢 / 血管機能 / 拡張反応 / サイクリック ヌクレオチド / ホスフォジエステラ-ゼ / ビタミンE / 過酸化脂質

研究概要

(]SYAdenosine受容体と加齢:加齢による受容体の変動を知るために[^3H]NECAを用いて受容体の結合実験をおこなった結果、結合部位の親和性は加齢の影響を受けていないが、結合部位の総数は加齢と共に減少しており、拡張効果の減弱と相関していることが明らかになった。
(]SYPhosphodiesterase(PDE)活性と加齢:cGMPーPDE阻害剤M&B22948(M&B)を用いて、拡張効果とcGMPの蓄積量を指標にしてcGMPーPDE活性と加齢の関連を検討した。M&BによるcGMPの蓄積量を測定したところ、老化血管では若い血管での蓄積量をはるかに上回っておりM&Bの拡張効果が老化血管でより顕著であるという結果と符号している。これらの結果はいずれも老化血管ほどPDE活性が上昇していることを物語っており、血管の老化がすすむにつれてcGMPの分解が亢進してゆき、そのために拡張反応が減弱して行くものと推測される。
(]SY血管の加齢現象に対するVitamineEの効果:VitamineEが加齢に伴う血管機能低下を軽減しうるかどうかをATPなどによる血管内皮依存性拡張反応を指標にして、正常ー、VitamineE欠乏ーおよびVitamineE過剰ーラットの血管で比較検討した。加齢に伴う拡張反応の減弱はVE欠乏血管では一層顕著に起こっていたが、VEにより機能の減弱は軽減されており、加齢の影響は軽減されていることが判明した。また血漿中の過酸化脂質量もこれと相関していることがわかった。Xanthine(100μM)とxanthine oxidase(0.1 U)を適用して生成した活性酸素はAChによる拡張を抑制るが、VE欠乏血管ではこの拡張は完全に消失した。これに対してVE過剰の血管では活性酸素による拡張機能の障害を殆んど受けていなかった。これらは、VEが老化あるいは、活性酸素による障害から血管機能を保護しうる可能性のあることを示唆している。

研究成果

• [文献書誌] Moritoki,H.,Tanioka,A.,Maeshiba,Y.,Iwamoto,T.,Ishida,Y.&Araki,H.: "Ageーassociated decrease in histamineーinduced vasodilatation may be due to reduction of cyclic GMP formation." Brit.J.Pharmacol.95. 1015-1022 (1988)
• [文献書誌] Moritoki,H.,Matsugi,T.,Takase,H.,Ueda,H.&Tanioka,A.: "Evidence for the involvement of cyclic GMP in adenosineーinduced ageーdependent vasodilataion." Brit.J.Pharmacol..,.
• [文献書誌] Moritoki,H.,Yoshikawa,T.,Hisayama,T.&Takase,H.: "Contribution of the endothelial function to vasodilator effect of atrial natriuretic peptide"
• [文献書誌] Moritoki,H.,Tanioka,A.Ueda,H & Matsugi,T.: "Adenosine-induced vasodilation is mediated by cGMP.in:Bioinformatics" Eds.Hatase & Wong,Elsevier,Amsterdam, 251-254 (1989)
• [文献書誌] Moritoki,H.,Tanioka,A.& Ueda,H.: "Does cGMP mediated adenosine-induced vasodilation?in:Biosignaling in Cardiac and Vascular Systems." Eds.Fujiwara et al.,Pergamon Press,Oxford, 292-295 (1989)
• [文献書誌] Moritoki,H,.Tanioka,A.,Matsugi,T.&Takase,H.: "Indication of possible association of decrease in cGMP-mediated vaso-dilation with increase in c GMP-phosphodiesterase activity during aging.:in Biosignaling in Cardiac and Vascular Systems." Eds.Fujiwara et al.,Pergamon Press,Oxford, 288-291 (1989)
• [文献書誌] Moritoki,H.,Tanioka,A.& Ueda,H.: "Possible mechanisms of age-associated changes in vascular function.in:Biosignaling in Cardiac and Vascular Systems." Eds.Fujiwara et al.,Pergamon Press,Oxford, 284-287 (1989)