近年血小板活性化因子(PAF)は炎症のメディエ-タ-として注目され、産生細胞から血液中に遊離された場合、血漿/血清中のPAFアセチルヒドロラ-ゼ(以後PAFーAHと略す)により速やかに分解され、不活化されることが知られている。本研究担当者は初めて血漿PAFーAHを欠損する家系を発見し、常染色体性劣性遺伝すること、重症小児喘息患者中の欠損者の出現頻度が健常者より3倍高く、小児喘息重症化に導く遺伝・素因である可能性を明かにした。昨年度に引続き本酵素欠損が血清中の酵素蛋白質の異常に基づくことを確認するため、また本酵素産生細胞を同定する目的で、本酵素蛋白質の免疫学的検出法の開発を進めた。ヒトプ-ル血清からリンタングステン酸法により低密度リポ蛋白質を分離し、Tween20を用いてPAFーAHをリポ蛋白質から解離させ、セルロファインAMイオン交換カラム、Qセファロ-スカラム、TSKーGel HWー60カラム、Hydroxyapatite HPLCカラム、Asahipak GS-510 HPLCゲル濾過カラム、Mono Q FPLCカラムを用いてPAFーAH酵素蛋白の精製を進め、各種電気泳動法で単一バンドとなる標品を得た。この酵素標品を用いてウサギに常法に従い免疫し抗血清を作製した。免疫電気泳動法で抗血清が精製PAFーAH蛋白質と反応することが確認されたが、リポ蛋白質の一種で、PAFーAH活性を有しない血清蛋白質とも反応し、特異性に問題が生じた。そこでより特異性の高い抗体を得るためにBALB/Cマウスに免疫し、その脾臓細胞を常法に従いミエロ-マ細胞と融合させ、モノクロ-ナル抗体の作製を進めている。 同時に川崎病小児、全身性エリテマト-デス患者等で血清PAFアセチルヒドロラ-ゼ活性が異常に変動することを認めており、病態モデルとして水浸拘束ラットで血清PAFアセチルヒドロラ-ゼ活性の変動を確認している(業績1)。また代表的なPAF産生細胞である好中球からPAFが遊離されるか否か議論が別れていたが、PAFアセチルヒドロラ-ゼ欠損患者血清を用いて、血清蛋白質の中にPAF産生細胞からPAFを引き抜く作用のある蛋白質の存在を明かにすることが出来た(1989年日本生化学会大会発表)。
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