研究の目的:これまで高等植物における糖タンパク質の生合成マップの空白を埋めることを目的に糖鎖構造の解析を行ってきた、最近、筆者らはNーアセチルラクトサミン型の糖鎖(1)をはじめとする6種の糖鎖をシカモア(Sycamore、カエデの一種)の細胞培養液由来ラッカーゼに見い出した。この型の糖鎖は植物界では無とされていたものである。この構造を見ていると生合成に必要な酵素が浮き彫りにされ、生合成マップのかなりの部分が明らかになる可能性があり、これらの生合成酵素の存在を立証することが目的であった。 研究の成果:目的とする生合成転移酵素の検出用の受容体を調製するためにパイナップルーブロメラインに存在するオリゴ糖(2)の切り出しを行った。この際、ヒドラジン分解ーNーアセチル化法とアーモンド由来のグリコペプチダーゼ法を比較した。後者の酵素で切り出した場合は得たオリゴ糖鎖の非還元末端に酸性を示す残基が結合しており、この残基はシアル酸ではなく、ヒドラジン分解によりオリゴ糖鎖から切断されるものであった。また、この残基はオリゴ糖鎖の構造を解析するため、蛍光標識(2ーアミノピリジル化)によっても切断された。目下、この残基を解析中であるが、これが解明されると、高等植物由来のアスパラギン結合型糖鎖の生合成マップの重要な個所が明らかになると思われる。
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