研究概要 |
エストリオール(E_3)生合成中間体と考えられる16α-hydroxyandrostenedione(16α-OHA)の19-hydroxy体(1__ー)と19-oxo体(2)の合成をまず検討した。既知化合物の5α-bromo-3β-hydroxy-6β,19-epoxy-17-keto体を出発原料に用い、CuBr_2による16位臭素化と、得られる16α-bromideの含水ピリジン中NaOHによる立体選択的加水分解反応を鍵反応とし、これら反応を順次うまく組合せることにより、目的とする16α,19-dihydroxy体1__ーを好収率で得ることが出来た。また、19位水酸基をJones酸化し19-oxo体2を合成した。 ついで、上記で合成された化合物1__ーと2__ーを、ヒト胎盤ミクロゾームと共にNADPH存在下インキュベートし、E_3への変換を速度論的に検討した。このアロマターゼ活性測定は、電気化学的検出器装備の高速液体クロマトグラフィーによった。その結果、アロマターゼ活性のkmとVmaxは19-hydroxy体1__ーを基質にするとき、2.0μMと555pmol/min/mg protein、一方、16α-OHAのそれらは、0.89μMと35pmol/min/mg proteinであった。また、比活性は、前者では88pmol/min/mg proteinと後者の約3.3倍であった。また、19-oxo体2__ーのE_3への変換は19-hydroxy体1__ーよりも遅いものであった。これら結果は、E_3もエストロン(E_1)生合成と同じ機作で生合成されることを初めて明らかとした。 Androstenedioneの、1)種々位置にブロモアセトキシル基を導入したもの、2)6位にオキソ基を導入し3位の構造を変化させたもの、を合成し、それらのアロマターゼ阻害作用を検討した。その結果、6β-置換基が不可逆的酵素不活性化に重要であること、3-deoxy体も4-ene-6-one構造を持つと強く本酵素に結合することを見出し、アロマターゼ活性中心部位の構造に新しい知見を加えることができた。
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