研究課題/領域番号 |
63571059
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小林 凡郎 北里大学, 薬学部・生理化学, 教授 (90050319)
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研究分担者 |
石原 詔子 薬学部, 生理化学, 助手 (10050585)
渡辺 泰子 薬学部, 生理化学, 助教授 (80050409)
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キーワード | 骨髄球細胞 / 巨核球 / 血小板 / 微小管 / PMA / 蛋白質リン酸化 / スタウロスポリン |
研究概要 |
骨髄巨核球の末端細胞である血小板の刺激剤であるトロンビン(T)やホルボ-ルエステル(P)は、血小板蛋白燐酸化反応を促進するが、培養骨髄細胞の分化及び増殖には効果が無かった。蛋白質燐酸化酵素の阻害剤であるStdurosporine(STS)によりインスリンやPDGFで促進した骨髄球細胞の増殖は強く阻害された。しかしガングリオシドGD1aにより促進した骨髄球細胞の成熟に対しSTSの阻害効果は弱かった。STSの骨髄球細胞の増殖と成熟過程に対する阻害効果の相反性は、蛋白質燐酸化反応の同過程への関与の差異を示唆した。TやP刺激後の血小板蛋白燐酸化反応に対しSTSは10^<-6>M以上の濃度で阻害作用を示した。同一条件下P凝集はSTSによりほぼ完全に阻害されたが、T凝集は殆ど阻害されなかった。免疫電顕法による形態的検討からアクチンフィラメントや微小管などの細胞骨格構造蛋白の脱重合作用を有するPにSTSを添加すると微小管関連蛋白(MAP)と共に微小管を安定化させることが示唆され、STSの微小管安定化作用によりP刺激後の細胞骨格構造蛋白関連物質を介した情報伝達が阻害される可能性が考えられた。T刺激により形成される凝集塊中には微小管が存在し、血小板膜直下に存在して円盤状形態を維持する微小管はSTS処理により更に安定化するが、方向性を持って安定化した微小管がT刺激により失われて形成された凝集塊中には長い微小管断片として認められ、結果としてSTSはT凝集を阻害しなかった。以上の結果から骨髄球細胞で認めたSTSの増殖に対する阻害作用は、増殖時の微小管脱重合のSTSによる阻害に依ることが示唆された。又、成熟期にはSTSが有効でないことから一端安定化した微小管により形態が維持されている成熟骨髄球細胞に対してSTSが消極的役割しか演じないことが示唆された。これらの現象は、血小板に対する上記2種の刺激剤による凝集反応に及ぼすSTS作用の差異と矛盾しない。
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