研究概要 |
マウス骨髄細胞から巨核球系細胞への分化・増殖及び成熟に対する基礎的条件をPooke Weed Mitogen刺激脾細胞培養上清添加液体培地系で確立した後、ガングリオシドGD1aが巨核球の増殖と成熟を共に促進することを見い出した。更にモノシアロ体GD1aより強く巨核球の末端細胞である血小板の生成過程を促進した。血小板の刺激剤トロンビンやPMA(ホルボ-ルエステル)は培養骨髄細胞の分化・増殖に効果を示さなかったが、インスリンやPDGFでは骨髄細胞の増殖は強く促進された。この促進作用は蛋白質燐酸化の阻害剤スタウロスポリン(STS)により強く阻害されたが、GD1aにより促進した骨髄球細胞の成熟過程には微弱な阻害作用を示したのみであったことから増殖と成熟過程への蛋白質燐酸化反応の関与の差異が示唆された。 他方、血小板をPMAで刺激するとセリン/スレオニン残基燐酸化以外にチロシン残基燐酸化の促進が認められるが、従来報告してきた48Kd蛋白以外の標的として刺激により形成される血小板膜糖蛋白GPIIb・IIIa複合体のうち抗IIIa学クロ-ン抗体(ヒト血小板膜抗原)が家兎血小板のGPIIIaのエピト-プを共通的に認識することを見いだし、対照血小板のGPIIIaは66Kdであるのに対し、PMA刺激ではSDSによる解離度に抵抗性が生じて95Kdと少量の66Kdとなる燐酸化蛋白であって、我々の作成した抗フォスフォチロシン単クロ-ン抗体陽性の“95Kd"バンドと対応しGPIIIaのチロシン残基燐酸化の可能性は高く、Goldenら(J. B. C. III, 3117ー3127,1990)の提唱と矛盾しない。すなわち、トロンビンやPMAなどのアゴニスト類による刺激によって形成されたフィブリノ-ゲンレセプタ-としてのGPIIb・IIIa複合体のうち、90Kdsのチロシン残基燐酸化が血小板の凝集反応に於ける情報伝達機構に関与するものと考えられる。
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