研究課題/領域番号 |
63571061
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
堀江 利治 東京薬科大学, 薬学部 (90120154)
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研究分担者 |
林 正弘 東京薬科大学, 薬学部, 助教授 (20012669)
粟津 荘司 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (60012621)
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キーワード | 薬物毒性 / 肝毒性 / 脂質過酸化 / グルタチオン / 肝細胞 / アセトアミノフェン / 蛍光性物質 / 蛋白重合体 |
研究概要 |
アセトアミノェン(APAP)の肝毒性に於ける脂質過酸化の関与を主にラット肝細胞で検討した。APAPを広濃度範囲(0.1〜100mM)で遊離肝細胞(6x10^6)と37℃で3時間incubationし、以下の結果を得た。1.チオバルビツ-ル酸反応性物質(TBAーRS)の生成は、APAP濃度0.5mMあたりまではコントロ-ルと同程度であったが、それ以上の濃度でTBAーRSの生成は増加し、1〜2mMで最大値を示した。更に高濃度ではTBAーRSの生成が抑制され、10mM以上では、コントロ-ルと同程度にまでその生成が抑制された。2.トリパンブル-染色により細胞の生存率を測定した。TBAーRSの生成が最大であった1〜2mMで細胞生存率は最も低下しており、細胞生存率はTBAーRSの生成挙動と対照的であった。但しAPAP100mMでは細胞が完全に死滅したが、TBAーRSはコントロ-ルレベルであった。3.GoTの漏出は、TBAーRSの生成挙動とよく対応していた。しかし100mMではGOTの漏出は大きかった。4.細胞内グルタチオンはAPAP低濃度から減少し始め、APAP1〜2mM以上ではほば完全に涸渇した。5.SDSーポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出した高分子量蛋白重合体はAPAP1mMあたりでコントロ-ルよりも増大を始めるが、高濃度領域で低下し、更に100mMでは再び多量の蛋白重合体が出現した。以上のように、APAPによって脂質過酸化が発現するが、更にこの脂質過酸化が抑制されるというAPAPの濃度依存的な肝細胞への作用が示された。そこで、アスコルビン酸ーFeCl_2あるいはCCl_4による肝ミクロソ-ムでの脂質過酸化に対するAPAPの効果を調べると、脂質過酸化をAPAPが抑制した。遊離肝細胞サスペンジョン中のAPAP濃度を定量したところ、TBA-RSの生成が抑制されるあたりで未変化体APAP濃度は増加し始めた。従って、TBAーRS生成の抑制は反応系での未変化体APAPによる抗酸化作用によると考えられる。今後in vivoに於てAPAPの体内動能と脂質過酸化の発現との関連性を検討する計画である。
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