高コレステロ-ル血症患者の血小板は、その活性化能が正常に比して亢進していることが知られているので、その亢進機作を解明するため、正常ヒト血小板をレシチンーコレステロ-ル懸濁液と孵置して、in vitroでコレステロ-ル含量を正常以上に増大させた高コレステロ-ル血小板を調製し、これを用いて以下の成績を得た。 1.本血小板はコラ-ゲン、アラキドン酸、トロンビン、U46619刺激下での凝集能が亢進していた。 2.[^3H]アラキドン酸標識血小板をコラ-ゲン、トロンビン、A23187で刺激すると、いずれもアラキドン酸遊離の著明な増大が見られた。また、トロンビン刺激下でのジアシルグリセロ-ル生成も有意に増大していた。 3.刺激に伴う細胞内遊離Ca^<2+>量の増大をfura-2負荷血小板を用いて検索したところ、トロンビン、アラキドン酸、U46619刺激下でのそれが、有意に増大していた。また、^<45>Ca^<2+>流入の明らかな増大も見られた。 4.上記2の結果はホスホリパ-ゼA_2およびCの活性上昇を示唆しているので、さらに[^3H]標識血小板より膜画分を調製し、これにCa^<2+>存在下にGTPγSを添加したところ、アラキドン酸の遊離は有意に増大したが、ジアシルグリセロ-ルの生成は正常血小板膜と差は見られなかった。 5.トロンボキサンA_2受容体の変化を[^3H]U46619を用いて解析したところ、受容体数が著明に増大していた。 6.血小板細胞骨格タンパク質の再配列は、ホルボ-ルエステルおよびA23187刺激下に著明な促進がみられた。以上の結果から、血小板膜コレステロ-ルの増大による膜物性変化は、受容体、ホスホリパ-ゼA_2活性、Ca^<2+>流入機構を含む細胞内動員など、活性化に必須の膜機能を亢進させ、結果として著明な凝集能の亢進を引き起こすことが明らかとなった。
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