研究概要 |
ラット腎刷子縁膜をオクチルグルコシドで可溶化しsuporrose6カラムクロマトグラフィ-、WGAカラムクロマトグラフィ-を用いてNa^+H^+アンチポ-タ-を部分精製した。さらに、クロマトフィ-カシングをおこない、溶出された各画分をリポソ-ムに再構成後、昨年度報告した方法により、Na^+の濃度勾配に依存したアミロライド感受性のH^+の流出を測定した。しかし、いずれの画分にもNa^+/H^+アンチポ-タ-活性は検出できなかった。電気泳動上で単一バンドが得られるまで精製できなかった原因としては、精製が進むにつれ活性が低下すること、リポソ-ムに再構成して活性を測定するのに比較的多量のアンチポ-タ-を必要とすることが考えられる。 部分精製したNa^+/H^+アンチポ-タ-を再構成したリポソ-ムを利用した局所麻酔薬の作用機構の研究をおこなった。局所麻酔薬としてはリドカイン、ジブカインを用いた。リゾカインはNa^+の濃度勾配に依存したH^+流出、すなわちNa^+/H^+アンチポ-タ-活性を阻害し、その阻害効果は10^<-5>〜10^<-6>Mの範囲においては濃度依存的であった。また、この範囲の濃度ではリポソ-ムの流動性、透過性に変化を与えないことが、1,6-Diphenul-1,3,5-hexatrieneを蛍光プロ-ブとして用いた蛍光偏光解消法による流動性変化の測定、カルセイン封入リポソ-ムからのカルセイン透過測定により明らかとなった。これらの結果は、Na^+/H^+アンチポ-タ-、あるいはNa^+を輸送する膜タンパク質が、リドカインの標的部位である可能性を示唆している。一方、ジブカインはNa^+の濃度勾配の有無にかかわらずH^+の流出を強く抑制し、ジブカインの麻酔効果は膜脂質に対する非特異的なものであると考えられる。
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