研究概要 |
1.チアミンのチアゾ-ル部の生合成経路の酵素化学的検討 アイソト-プ標識の1ーデオキシーDースレオー2ーペンツロ-スの化学合成を検討したが,合成過程の中間体2,3ーOーイソプロピリデンーDーグリセルアルデヒドは非常に不安定な化合物であり,次の合成過程への十分な原料の供給ができなかった.そこで別途合成法を検討したが,目的物質である1ーデオキシーDースレオー2ーペンツロ-スも非常に不安定な化合物で,トレ-サ-実験を行うに十分な量が得られず,現在も検討中である. 2.ピリドキシンの炭素骨格生合成の検討 平成元年度には大腸菌を用いてピリドキシンの炭素骨格の検討を行ない,フラクト-スが取り込まれることを明らかにした. 本年度は真核生物である酵母を用いてピリドキシンの炭素源を検討した. Spenserらは大腸菌を用いてギ酸,グリシンが取り込まれることを報告している.そこで[ ^<13>C]ーギ酸,[ ^<15>N]ーグリシンをトリ-サ-として取り込み実験を行った. 酵母完全合成培地で培養し,菌体及び培養液からビリドキシンを抽出し,カラムクロマトグラフィ-を繰り返して精製した.精製したピリドキシンはアセチル誘導体として,GCーMSにより測定した. また,細胞内へのトレ-サ-の取り込み指標物質として,[ ^<13>C]ーギ酸を用いた場合には菌体核酸塩基のアデニンを,[ ^<15>N]ーグリシンを用いた場合には菌体タンパク質のグリシンを抽出精製し,GCーMSにより同位体の存在比率を比較検討した. その結果,グリシン,ギ酸共に酵母ではピリドキシンには取り込まれないことが明らかになった.
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