研究概要 |
細胞膜上に存在する受容体の機能発現機構を研究する上で、まず行う必要のあることは受容体タンパクを同定することである。オピオイド受容体の同定には、受容体と放射性標識リガンドを適当な試薬を用いた架橋反応を利用したアフィニティラベル法がよく用いられている。我々は本研究において、放射性リガンドと受容体を、ただ単に254nmの紫外線を照射するのみで架橋する方法についてマウス脳P_2膜を用いて検討し、モルヒネ受容体等の同定に関して良好な結果を得た。マウス脳P_2膜では、紫外線照射によって^3H-モルヒネと架橋される膜タンパクは主として58kDaの分子量を持つものであり、その他、53kDaのタンパクも弱いながら架橋された。モルヒネの受容体に対する結合特異性から、前者はミュ-、後者はデルタ受容体であると考えられる。このような架橋はβーエンドルフィンを用いても同様な結果が得られた。したがって、受容体の紫外線照射によるアフィニティラベルは、広くオピオイド受容体の同定法として利用することができるものと考えられる。架橋反応の反応機構については未だ不明の点も多いが、リガンドまたは受容体のフェノ-ル性残基が関与するものと思われる。 一方、モルヒネなどのアゴニストがミュ-受容体に結合したときに起こる生化学的反応についても、本研究では特に受容体のリン酸化反応に焦点を絞り検討した。その結果、ミュ-受容体はモルヒネあるいは〔DーAla^2,DーLeu^5〕エンケファリンアミドなどのアゴニストの結合により、リン酸化が促進されること、および、ナロキソンのようなアンタゴニストによって、このリン酸化反応が抑制されることが明らかとなった。これらの事実は、モルヒネ等の受容体を介しての機能発現には、受容体のリン酸化反応が関与することを強く示唆するものである。
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