研究課題/領域番号 |
63571072
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研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
北川 隆之 国立予防衛生研究所, 化学部, 室長 (80092188)
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研究分担者 |
天野 富美夫 国立予防衛生研究所, 化学部, 主任研究員 (90142132)
赤松 穣 国立予防衛生研究所, 化学部, 部長 (00072900)
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キーワード | 表面膜透過性 / ATP作用 / カルモジュリン阻害剤 / 透過性修飾 / 膜変異株 / がん化学療法 |
研究概要 |
動物細胞における表面膜透過性のATPによる調節機構およびこの作用を利用した新しいがん化学療法の開発研究を引続き行い、以下の知見を得た。 1)ATPによるがん細胞の表面膜透過性変化はTFPやW7等のカルモジュリン阻害剤により著明に増強されるが、その有効濃度範囲はきわめて狭い。そこで、より有用な修飾剤の開発を目的として興和(株)東京研究所で合成された新規スルホンアミド誘導体の作用を調べた。これらスルホンアミド誘導体のうち4種にカルモジュリン阻害作用が認められ、それらのIC50値はCa^<2+>存在下で約20ー50μMであった。これら新規カルモジュリン阻害剤のうち3種がCHO細胞におけるATP依存性の表面膜透過性変化を著明に増強した。またカルモジュリン阻害活性のない誘導体はATP作用に対しても無効であった。以上の結果はATPによる透過性調節におけるカルモジュリンの関与を更に示唆した。またこれらの新規薬剤は従来のカルモジュリン阻害剤に比べ、より特異的にATP作用を増強する傾向を示し、応用面での利点が期待される。 2)ATP作用のがん細胞に対する特異性に着目し、この作用のがん化学療法への応用について、in vivoでの担癌マウスの延命効果を指標として興和(株)東京研究所と共同で研究を行った。その結果、制ガン剤の5ーFUによる腹水癌マウスの延命作用が、ATPの併用により増強され、平均生存日数は未処置の約3倍にまで達した。ATPの併用効果はアドリアマイシンを制ガン剤として用いた場合にも認められた。これらATP作用の調節機構を更に検討中である。 3)放射性標識したATPおよびATP類似体を用いて、CHO細胞および我々の分離したATP耐性変異株についてATP受容体の同定を試みたが、これを明らかにするには至らなかった。現在更に検討中である。
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