^3H-ニトレンジピン(NTD)と^3H-PN200-110(PN)を標識リガンドとするラジオレセプタ-アッセイ法により、ブタ冠動脈におけるカルシウム(Ca)拮抗薬受容体を測定し、同受容体に対する二価金属陽イオンおよびEDTAの影響を検討した。〔実験成績〕1.ブタ冠動脈への^3H-NTD及び^3H-PNの特異的結合能は、Ca^<2+>(10μM)、Mg^<2+>(10μM)、Mn^<2+>(10mM)およびCa^<2+>(10μM-10mM)によって、15-108%濃度依存的に増加し、Zn^<2+>(10-100μM)、Ca^<2+>(1-100μM)、Ni^<2+>(1-10mM)、Ca^<2+>(1-100μM)ならびにBa^<2+>(0.1-10mM)によっては10-80%抑制された。2.二価イオンのキレ-ト剤であるEDTA(IuM-ImM)は、ブタ冠動脈への^3H-NTDならびに^3H-PNの特異的結合能を濃度依存的に抑制し、そのIC_<50>値はそれぞれに121μM及び128μMであった。また、EDTA(10mM)を含むKrebs phosphate bufferで調整した冠動脈受容体標品において、^3H-PNの結合能は、EDTAを処理しない場合の結合能の約20%に減少した。このEDTAを前処理した冠動脈において、きわめて低濃度(1μM-10mM)のCa^<2+>ないしMg^<2+>は、いずれも^3H-PNの結合能を濃度依存的に増加(回復)させた。この0.1および1mMによる増強作用は、Mg^<2+>よりCa^<2+>において顕著であった。ブタ冠動脈への^3H-PN結合能のEDTAによる減少並びにCa^<2+>による増強作用は、スキャチャ-ド解析から、^3H-PN結合能の解離定数(Ka値)よりもむしろ最大結合能(Bmax)の変動に基づくことが示された。〔結論〕ブタ冠動脈への^3H-NTDおよび^3H-PNの結合は、Ca^<2+>およびMg^<2+>の存在に依存していたことから、これら二価陽イオンは、血管系におけるCa拮抗薬受容体へのジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の結合に必須な因子であると推定された。^3H-PNは、冠動脈を始め、血管系でのCa拮抗薬受容体の同定やその特性の解析に、すぐれた標識リガンドであり、、本リガンドを用いるラジオレセプタ-アッセイ法は、臨床的標的部位である冠動脈でのCa拮抗薬の作用機構を解明するようで、きわめて有用である。
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