硫酸転移酵素は内因性および外来性の脂溶性物質の硫酸抱合を触媒しヒトを含む高等動物においてはステロイドの生合成あるいは毒物や発癌物質の代謝活性化の経路としても重要である。ラット肝には基質特異性を異にする複数の硫酸転移酵素が存在し、その活性には著しい性差が認められている。この性差の発現機構につき以下の研究を行った。 1.ラットを生後24時間以内に性腺摘除を行い、9週令で肝可溶性画分の硫酸転移酵素活性を測定した。正常ラットにおいて雄>雌性の活性を示すNーヒドロキシー2ーアセチルアミノフルオレンおよびパラニトロフェノールに対する活性は雄性ラットの性腺摘除によって著しく低下した。一方雌性ラットにおいてより高い活性を示すコルチゾール硫酸抱合反応は雄ラットの性腺摘除によって著しく増加し、雌性ラットの性腺摘除によって低下した。 2.新生児期に性腺摘除した雄ラットにテストステロンを投与すると雄型の活性(Nーヒドロキシアセチルアミノフルオレン)は回復し、雌型活性(コルチゾール)は低下した。また雄性正常ラットにエストラジオールを投与しても雌型活性は増加した。 3.下垂体を摘除すると雄型および雌型活性はいずれも著しい減少を示した。雄性ラットで観察されるようなパルスパターンになるように成長ホルモンを投与すると雄型活性は著しい増加を示した。一方雌型パターンになるように成長ホルモンを持続注入するとコルチゾールに対する抱合活性が増加した。しかしながらテストステロンやエストラジオールを下垂体摘除ラットに投与してもいずれの活性にも有意な変動は認められなかった。 4.以上の結果より、ラット肝に含まれる複数種の硫酸転移酵素が成長ホルモンによる調節を受けていること、又性ステロイドによる調節は主に視床下部下垂体系を介して起こることが明らかとなった。
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