研究概要 |
薬物の腸管吸収を制御する2つの要因として,膜透過性及び血流依存性を解析した,膜透過過程には上皮細胞内及び細胞間の2つの透過ル-トが存在している.難吸収性薬物セフメタゾ-ル,ホスホマイシンの空腸,結腸吸収はカプリン酸ナトリウム(C10)等の促進剤により有意に増大され,その効果はin situル-プ法により,結腸〉空腸であった。C10の細胞間ル-トへの作用機構としては,結腸膜のEquivalentポア-半径が増大すること,水溶性非電解質の結腸膜透過性vs.自由探散係数の関係から得られた大小2つのポア-の透過性が共に増大することが示された。さらに,インピ-ダンス解析は細胞間のTight junction(TJ)の抵抗(Rj)の減少及び膜キャパシタンス(CM)の増大を示し,(ポア-有効面積)/(拡散距離)の増大,電顕写真における側細胞関隙の拡大を反映した.C10の作用機構の一つとして,TJ付近の収縮タンパクへの作用が示唆された.C10を除去した後にRj,CMがコントロ-ル値へ回復した結果より,C10作用の可逆性が示された.一方,空腸の細胞間ル-トに対するC10作用はVoltage Clamp法による結果と同様に,見いだせなかった,空腸のRjは結腸よりもはるかに小であり,促進剤が作用を発揮するには,ある値以上のRjが必要であることが示唆された.C10の細胞内ル-トに対する作用に関しては,蛍光 偏光解消法により,空腸及び結腸部の膜タンパク質及び脂質との相互作用による膜Perturbationを介しての透過性増大が示された.細胞内ル-トヘのC10作用は空腸〉結腸であり,in situ系における部位差(結腸〉空腸)を説明するには,細胞間ル-トヘのC10作用が,より重要であることが示された.吸収律速性の検討には,血管潅流液としてフルオロカ-ボン乳剤を用いた腸管血管同時潅流法が有効であり,inシsitu系における吸収性を再現できることが示された.この方法により,アンチピリンはほぼ完全な血流律速,サリチル酸はほぼ等しい血流と膜透過律速の吸収が示された.吸収時のアルブミンの作用については引き続き検討中である.
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