研究概要 |
血清中のリポ蛋白の脂質部分が過酸化を受け、その結果生ずる過酸化脂質の分解産物によってリポ蛋白の蛋白部分が修飾を受けたもの(一種の変性リポ蛋白)の酵素免疫測定法を開発するにあたり、まず初めに、脂質・蛋白複合体の蛋白部分に存在する抗原決定基と抗体との反応を確実なものとするためのリポ蛋白の前処理方法について検討を加えた。 アポリポ蛋白A-Iの酵素免疫測定法について見ると、試料血清の前処理方法として、1.希釈(2万倍)、2.脱脂(ジイソプロピルエーテル/ブタノール,6:4)、3.6Mグアニジン処理、4.希釈+加熱(52度、3時間)の4種を検討した。アポA-Iの定量には、精製アポA-Iを抗原として家兎に免疫して得た抗血清からIg-Gを精製して第一抗体とし、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギIg-G(ヤギ)を第二抗体とする二抗体法による酵素免疫測定法を用いた。その結果、最も良好な成績を与えたのは、4.の希釈+加熱による前処理方法であった。この方法での測定内変動係数(CV)は2.1〜13.2%で、低濃度の試料を除いて良好であった。測定間変動係数も7.8〜8.1%でほぼ満足すべき結果と思われた。 同様に、アポリポ蛋白Eの二抗体法による酵素免疫測定法について見ると、4種の前処理方法の中ではグアニジンによる前処理が最も良好な成績を与え、二抗体法による酵素免疫測定法を用いる場合はアポリポ蛋白の種類によって最適な前処理方法が異なることが判った。 二抗体法に代えて、サンドイッチ法による酵素免疫測定法で同様に検討したところ、アポリポ蛋白A-Iとアポリポ蛋白Eのいずれにおいてもグアニジン処理が最も良好な結果を得た。
|