好中球の血小板活性化因子合成能(AT)は、炎症性疾患で増加し、また臨床症状との相関をみると発熱との関係が最も強かった。そこで、発熱起因物質として最近注目されているinterleukin 1等のcytokineの好中球AT活性への影響をみた。評価できたcytokineのうち、interferron α、β、γはAT活性にまったく影響がなく、またinterleukin 1、colony-stimulating factorもごく弱い増強作用を示すのみであった。一方、tumor necrosis factor(TNF)は0.1U/mol程度の少量より好中球AT活性を増強し、約10U/molが至適濃度であった。このTNFの作用は好中球に加えた5分後より出現し、1時間以上持続した。またこの効果はTNFに対する特異抗体で阻害されたことより、TNF試料の混在物でなく、TNF自身に由来するものと考えられた。次に好中球AT活性増強の作用機序について考察を加えた。このTNFの作用は、アラキドン酸代謝阻害剤、細胞内カルシウム動員阻害剤で抑制されず、またTNFは好中球の細胞内カルシウム増加を惹起しなかったことより、TNFはアラキドン酸代謝、及びそれに由来する細胞内カルシウムによらず好中球ATに働いていると考えられた。発熱起因物質として有名なinterleukin 1にこの作用がなく、TNFにのみ存在することは興味ある所見であり、TNFの臨床応用例において、血小板活性化因子に由来すると考えられる低血圧が認められた事実に合致する。好中球AT活性増加のみでは血小板活性化因子は産生されず、phospholipase A_2の活性化が同時におきることが必要であり、健康人においては、TNF投与により直ちに血小板活性化因子が産生され、低血圧になることはない。しかし感染症患者等、細菌内毒素等によりphospholipase A_2の活性化がすでにおきている可能性のある場合、TNFの投与は慎重になされるべきと考えられる。
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