研究概要 |
大規模の甲状腺検査データベースを利用して、主成分分析により、3種の甲状腺機能検査(T4,T3,T3U)から、甲状腺ホルモン結合蛋白の異常を表わす新しい検査指標(第2主成分主成分スコアに相当するので以下z2と略す)を作成した。 主たる甲状腺ホルモン結合蛋白であるTBGが測定されている4000例の検体で、この新らしい甲状腺結合蛋白指標z2を求めた。両者の間には強い相関を認めたが、マハラビノスの汎距離を基準にして、105例の検体を解離例として抜き出した。そしてその解離が、TBG以外の結合蛋白濃度の異常によるのか、またいずれかの結合蛋白の質的な異常によるのかを次にように調べた。 まず、量的異常については、TBPA、アルブミン濃度を測定した。また質的異常については、^<125>IーT4または^<125>IーT3による電気泳動を行なった。 この結果、(1)大多数の検体は、比較的作用の弱いTBG以外の結合蛋白(TBPA、アルブミン)の量的異常であった。(2)TBG、TBPAの結合蛋白の親和恒数が変化している可能性のあるものが5例見いだされた。(3)7例の検体で、T4と各結合蛋白の結合は正常でも、T3の結合に異常のあるものが見いだされた。それらの症例に特徴的な電気泳動パターンとして、TBGの後ろに尾を引く幅広いピークの存在が明らかになった。(4)アルブミンが化学的に定量できるにもかかわらず、それにT3が結合できない症例(T4とは結合)が1例見いだされた。 今後各症例の臨床経過を追うとともに、基礎的には、平衡透析法により各結合蛋白の結合能の解析、結合蛋白の構造異常の検索などを行なう予定である。
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