研究課題/領域番号 |
63571111
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
和田 孝雄 慶應義塾大学, 医学部(内科学), 講師 (10090036)
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研究分担者 |
中島 淳 慶應義塾大学, 医学部(泌尿器科学), 助手 (10167546)
出口 修宏 慶應義塾大学, 医学部(泌尿器科学), 講師 (90118977)
松尾 宣武 慶應義塾大学, 医学部(小児科学), 助教授 (50173802)
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キーワード | 臨床検査 / 時系列解析 / 赤池法 / パワー寄与率 / インパルス応答 / 免疫ネットワーク / フィードバック解析 |
研究概要 |
臨床検査から得られる時系列データにおいては、生体内におけるフィードバックやネットワークの影響が加わり、入力と出力の関係がくずれるために、変数間の正しい関係を見出すのは難しい。そこで我々は、文部省統計数理研究所長赤池弘次博士らの考案した自己回帰モデルを用いたフィードバック解析法を、臨床検査データの解析に応用すべく研究を開始した。この解析により、検査データを患者の病態解明に有効に役立てようとするものである。今年度は初めての試みとして、透析患者35名の7ー10年にわたる長期間にわたる血液データの変動を解析することによって、赤池法が臨床検査データ解析にもよく適合することを確かめることを中心に研究を進めた。まず長期のデータを全て大型コンピュータに入力し、これをデータベースとした。多変量解析によって選択された2変数つまり、血清総蛋白濃度(TP)とヘモグロビン濃度(Hb)の変動から各患者について自己回帰係数を算出し、これから赤池のパワー寄与率とインパルス応答を求めた。これらの2手段により、35名の患者のほとんど全てにおいて、上記2変数間において相関係数の場合のような両方向性ではなく一方向性の関係を表示し得ることが証明された。すなわち、35名のうち1例を除いた全例において、TPの上昇によりHbが低下するが、Hbの上昇によってはTPの変化はほとんど見られなかった。アルブミンについても同様な関係があり、ガンマグロブリンではHbの変化を生じ得なかった。これらの結果から、透析患者の貧血と蛋白代謝の間に存在するフィードバックの役割を明らかにし得た。この結果をふまえて、Tリンパ球のサブセットや血清イムノグロブリンの変動を解析し、この方法が免疫ネットワークの解析に有力な手法となることが示唆された。いずれにせよ、赤池法の臨床応用はかなり有望である。この結果を次年度の研究につなげて行きたい。
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