研究概要 |
平成元年度は伝染性膿痂疹患者35名より黄色ブドウ球菌を分離すると同時に血液を採取することが出来、感作リンパ球を分離後、PHAによる刺激試験及び10^5個のリンパ球と50MgのA型表皮剥脱素(ETA)との培養によりantigen induced T cell proliferation assayを行った。分離菌株のETA産生能は培養液を新産仔マウスの皮下に接種して調べた。患児及びその家族より本疾患の既応歴を聴取し、初めて罹患した患児群(初感染群:23名)と以前に罹患した事のある患児群(既応歴群:12名)に分けて結果を比較した。PHA刺激試験において初感染群は1名を除き正常範囲の値を示したが、既応歴群では5名が正常値を示したが7名が低値を示すなど明らかにT細胞機能の低下の存在が示唆された。一方antigen induced T cell proliferation assayにおいて初感染群は高値(2.5×10^4CPM以上)を示した者5名、中間値(1〜2.5×10^4CPM)の者11名、低値(1×10^4CPM以下)の者7名であったのに対して、既応歴群では中間値を示した者6名、低値を示した者6名であって、平均値でみると既応歴群の方が低い値を示した。また患児よりの採血量の問題があって、患児のHLA classII抗原の解析は行えなかったが、健常人についてantigen induced T cell proliferation assayでスクリ-ニングし、高値を示した者3名、低値を示した者1名のリンパ球を用いて抗血清法によるHLA DR及びDQ抗原の検索では、低値の者はDR2,DR4,DRw53,DQw1,DQw4の各抗原を有していたが、高値の者の中で、これらの抗原と異なっていてしかも共通の抗原は見出し得なかった。一方DP抗原はDPβプロ-ブを用いたDNA typingで調べたが、低値の者がDPw2,DPw3を持っているので、高値の者に共通している抗原型でDPw2とDPw3以外の抗原を検索したが見出し得なかった。ETAに体する免疫応答遺伝子はHLAのclass IIの特定の抗原系とは連関していない可能性が高く、更に検討することが必要であると思われます。
|