研究課題/領域番号 |
63571115
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
河野 均也 日本大学, 医学部・臨床病理科, 教授 (60059368)
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研究分担者 |
久保 信彦 日本大学, 医学部・臨床病理科, 助手 (40214994)
馬場 俊一 日本大学, 医学部・皮膚科, 講師 (30102479)
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キーワード | ライム・ボレリア症(Lyme boneliosis) / borrelia burgdorferi / 人畜共通伝染病 / マダニ咬傷 / 慢性遊走性紅斑 |
研究概要 |
平成元年度は、それまでに我々が開発したボレリア全菌体を抗原として用いた酵素抗体法間接法の一つである、lmmunoperoxidase法(IP法)をもちいて依頼検体等についてスクリ-ニング検査を施行した。本邦ではすでに北海道の数施設においてマダニよりボレリアが分離されている(北海道道衛研 佐藤ら、旭川医大 宮本ら)。そこで本邦分離株を入手して、この抗原性をアメリカ標準株(B-31)と、比較を行いほぼ一致した結果を得た。本邦において、これまでのライム病が疑われた16例についてはすでに検討を加えて報告したが1989年4月から12月までの血清診断の結果ではさらに多数のIP法による陽性者が認められた。しかし、さらにおこなった検討の結果ではIP法では、マダニ咬傷のより早期から抗ボレリア抗体が検出されることが確認されたものの、一方でマダニ咬傷のはっきりしない健康人を含めて、多数の病態で抗体陽性者が認められることが明らかとなった。欧米ではすでに施設間の抗ボレリア抗体の判定に差異が認められることが問題になっている。すでに市販されている各種の抗体測定方法による測定結果でも方法による差異が認められることが明らかとなった。一方で感度が高く特異性が低い方法で検査をおこなった場合false positiveが増加することが考えられる。これらの背景をふまえて、我々はマダニ咬傷後に慢性遊走性紅斑(ECM)を認め症例に対して抗原としてB-31を使用してウエスタンブロット法を行い患者血清中に41kdのボレリア抗原に対するlgG抗体を検出した。マダニ咬傷後の患者血清における検討ではIP法を含めた各種の方法間で感度,特異性を検討した。 本邦における抗体陽性例の最初の報告は長野県の症例であるが本邦において、本州のマダニよりボレリアの分離の報告はまだ無く、また患者よりの分離の報告も無い。本邦におけるマダニよりボレリア分離地域等の特定地域の正常者や、より感作の機会の高い職種の人々における血清抗ボレリア抗体陽性率、マダニについてのボレリア保有率やそのマダニの種差についての検討等が今後、来年度以降の検討課題と考えられた。
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