研究課題/領域番号 |
63571117
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
上田 智 川崎医科大学, 検査診断, 教授 (40068987)
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研究分担者 |
原野 恵子 川崎医科大学, 生化学, 助手 (00069072)
原野 昭雄 川崎医科大学, 生化学, 助教授 (60069028)
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キーワード | βサラセミア / 遺伝子解析 / クローニング / DNAシークエンシング / ヘモグロビン合成 / αサラセミア-1 / αサラセミア-2 / HbH症 / 遺伝子地図 |
研究概要 |
1.βーサラセミア(Thal)症の遺伝子解析による病態解析:血液学的異常(小球性・低色素性貧血)、血球形態異常(標的・奇形赤血球、大小不同)及びヘモグロビン(Hb)合成試験においてβーグロビン合成抑制を示す患者の末梢血液から得たDNAを解析し、本患者の病態を遺伝子レベルで解明した。DNAの制限酵素消化によりβーグロビン遺伝子を含むDNA断片をとり、同一酵素で消化したベクターに組み込み、2種類のクローンを得、それぞれについて、ジデオキシ法でβーグロビン遺伝子領域の塩基配列を決定した。この結果、1種のクローンから、βーグロビンの90番GluのコドンGAGの第1塩基がTに変わりTAGの終止コドンになっている事が明らかになった。他の異常は見い出されなかった。この事実から、βーグロビン遺伝子のエキソン領域での終止コドン(TAG)の新生に伴うβ^0ーThalによりβーグロビン合成抑制及び血液学的異常をおこすと結論された。このβ^0ーThalは日本では勿論、世界でも初例であった。 2.αーThal、特にHbH症の遺伝子解析:血液学的異常を伴う患児について、血液検査、Hb分析、Hb合成試験によりHbH症を疑い、遺伝子解析によって、その病態を明らかにした。患児のDNAを種々の制限酵素で消化後αー様グロビン遺伝子群特異プローブを用いて、αー様遺伝子群の制限酵素地図を作成した。この結果、本患児は通常存在する4個のαー遺伝子のうち3個が脱落したHbH症(遺伝子型:--/ーα)すなわち、αーThalー1(--/)遺伝子とαーThalー2(ーα/)遺伝子の遺伝によるものであった。両親及び祖父母を含めた家族調査の結果、αーThalー1遺伝子は父親及び父方祖父にみられた。このThal遺伝子は、東南アジア地方に広く分布している--SEA型のαーThalー1に相当するものであった。又、αーThalー2遺伝子は、母親及び妹にみられた。この遺伝子脱落は-α^<3.7>型で示され、類似の-α^<4.2>型α-Thal-2に比較して、臨床的に軽症例であった。
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