研究課題
昨年度に引き続き、基底膜の成分であるラミニンとIV型コラ-ゲンの免疫組織染色を行ないその結果を3つのTypeに分類した。すなわち、基底膜が強く厚く染色されるTypeI、基底膜が弱く薄く一部欠如するTypeII、基底膜が弱く断片的に染色されるTypeIIIである。高分化型腺癌はTypeIが17例(71%)で残りはtypeIIであったのに対して、低分化型では5例中4例(80%)がTypeIIIであった。上皮内腺癌はすべてTypeIであったが、悪性腺腫は組織学的に極めて高分化であるにもかかわらず、TypeIIIが83%であった。Type別の予後はTypeI、IIに比較してIIIが悪く、組織分化度別の予後でもTypeIIIが多い未分化型や悪性腺腫が悪かった。基底膜の染色性と予後の間に関連が見られた。これより悪性腺腫の予後が不良であることの一原因として基底膜の性質が関係しているのではないかと推測した。一方、腺癌をhigh iron diamine(HID)およびAlcian blue(AB)粘液染色により検討した結果でも、悪性腺腫が他の腺癌と異なった粘液分泌機能を示していた。結果をHID、ABそれぞれに対する染色態度として表してみると、純粋腺癌は両者陰性、正常細胞はAB陰性、HID陽性、そして悪性腺腫は両者陽性となった。腺癌と悪性腺腫は正常細胞を中心にして癌では機能を失う方向に、悪性腺腫では新たな分泌能を獲得する方向にと、反対の方向に脱分化していると考えられる。これより、悪性腺腫を腺癌の最も分化した癌と考えるより、通常の腺癌とは機能的に全く違う癌と考えたほうが、その治療成績の悪さとも合致すると考えられた。
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