最新のレーザーである色素レーザーのイエロー(577nm)とオレンジ(590nm)は酸化ヘモグロビンによる吸収率が従来のアルゴンレーザーに比べてきわめて高く、網膜血管病変に対するより優れた凝固作用が期待される。そこで実験的網膜静脈閉塞における病的網膜血管に対する色素レーザーの凝固作用の卓越性を検討し、より広範な臨床応用の可能性を追究した。 カニクレサルに色素レーザー・イエローを用いて網膜分枝静脈閉塞を作成した。閉塞した網膜静脈の潅流流域の拡張血管や網膜浮腫に対して色素レーザー・イエロー、オレンジにおよびアルゴン・ブルーグリーンで光凝固を行い、早期および瘢痕期について経時的に蛍光眼底検査および光顕と電顕による形態学的検索を行い、これらの結果を比較検討した。 各々のレーザー光における網膜への作用を検討した結果、色素レーザー・イエローは網膜血管に対して優れた凝固効果を示し、網膜内層に主に作用するため、浮腺などの原因となる血管底閉塞部の治療に優れた効果があった。しかしながら、神経線維層から硝子体にかけての硝子体網膜境界面に対しても、ある程度の影響がみられ、これは硝子体網膜牽引などの原因となる可能性があるので、現在検索中である。オレンジは組織学的変化では明確ではないが、網膜血管への作用はやや劣る印象を受けた。色素レーザー・イエローによる網膜血管病変に対する光凝固の効果は、今回の研究によりその本質が解明されつつある。 今年度の反省点として、サルにおける血管閉塞はヒトの場合と多少異なる印象を受けた。それは網膜出血が少なく、さらに血管が早期に再疎通してしまうことがある。そのため、血栓形成をより確実にするため、光凝固の方法に改善し、初回凝固後の観察期間をやや延長した。
|