1.液体金属相にある高密度水素プラズマの粒子間相関構造を、イオン-イオン相関はhypernetted chain(HNC)近似で、電子-電子及び電子-イオン相関は修正された畳み込み近似(modified-convolution approximation、略してMCA)で取り扱う積分方程式の方法(HNC/MCA法)によって解析した。特に、金属相と絶縁体相の境界近傍の温度・密度領域に焦点を絞って、相関関数・状態方程式・輸送係数の計算を行い、次のような結果を得た: (1)絶縁体相に接近するにつれて、イオンがその周りに電子を強く引き付け、電子-イオン相関が孤立水素原子の相関構造に類似してくる。 (2)(1)に伴って、電子-イオン対あたりの相関エネルギ-が孤立水素原子の値に漸近する。 (3)さらに、(1)・(2)に伴い、電気伝導度・熱伝導度の急激な減少が見られる。 2.高密度水素プラズマ中に埋め込まれた不純物イオンの電子準位を様々な物理効果を順次取り入れていくモデル計算により解析した。不純物(輻射粒子)としては、炭素とネオンを考え、束縛電子の数は1個であるとした。いくつかの温度・密度に対して計算を行った結果、プラズマの遮蔽効果・粒子間の強結合効果・プラズマ粒子の電子軌道内貫通効果と順次取り入れるにつれて、束縛電子の感じる原子ポテンシャルが浅くなり、それに伴って、電子準位が持ち上がることを見いだした。特に、プラズマの密度が高い場合には、これらの効果は定量的に重要である。 3.高密度水素系の金属-絶縁体転移を論じるためには、高密度水素プラズマの相関構造と高密度物質中の水素原子・分子の電子状態の両方が正確にわかっている必要がある。上記の1・2の研究成果はこの問題を解決するための要諦となる部分である。
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