本研究者は連続音声認識に対して知識工学的手法を導入すると共に、その知識ベ-スの構築を支援する環境を開発してきた。本研究の最終目的はこえまでの本研究者の成果を更に進めて、知識工学的手法を連続音声認識の新しい手法として確立することにある。具体的には、帰納推論に基づく音声デ-タからの認識知識の学習法を開発し、それを人手による知識の開発環境と統合した新しい認識知識開発環境を開発した。 1.新しい属性の生成:ここでは予め与えられた基本的な属性を組み合わせることによって適切な概念レベルの強力な属性を生成する方法を開発した。まず初期の学習によって得られた決定木を解決することによって、分類が困難であった音韻の組を検出する。次に、それらを分類するために必要な部分決定木を生成する。 2.決定木の一般化法:生成された決定木、及び新属性としての部分木は、そのままでは未知の音声デ-タに対してはうまく動作するとは限らない。特にサンプルが少数であることによる決定木の偏りを修正するためには適切な一般化操作を行うことが必要である。そこで、ノ-ドに属するサンプルの数や属性の値によって一般化するオペレ-タを開発した。 3.評価:学習により生成された知識ベ-スによる認識を実際に行うことによって、人手によって構成された知識ベ-スの性能と比較した結果、前者が88%で後者が82%であり、かなり優れた性能を持つことを確認すると共に、属性生成の効果と一般化の効果が大きいことが確かめられた。 4.更に、認識ル-ル記述言語を拡張し、専門家が開発したル-ルと学習システムが生成したル-ルとが協調して稼働する方式を開発した。それを用いて、専門家が開発したル-ルに蓄積された知識を有効に利用して、認識知識を学習することができる強力な方式を開発した。その結果、OPENデ-タに関して88%の認識率を得た。これは人手による認識ル-ルと匹敵する性能であり、本学習方式の有効性が確認された。
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